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平成10年度 調査研究結果報告


宮城県における粉じん作業とその健康管理の実態

主任研究者
共同研究者
宮城産業保健推進センター所長
宮城産業保健推進センター相談員
   同
   同
安田 恒人
加美山茂利
佐藤 吉洋
阿部 裕一

1 はじめに
 宮城労働基準局の報告によれば、宮城県における平成9年のじん肺健康診断の受診事業場は186事業場、受診者数は2,396人であり、じん肺健診受診者中の有所見者数は155名で有所見率は6.5%で、全国の7.8%に比べてやや低い。過去10年間ほぼ10%前後を上下していた有所見率からすると低下傾向がみえてきたと思われる。また、有所見者のうち、管理2の占める割合は過去10年間の前半は95%程度であったが、後半では98〜99%と大部分を占めるようになり、じん肺健康管理の問題もかなり落着きを見せている。
 一方、じん肺健診以外で発見され、随時申請で認定されるじん肺患者は昭和63年の156人、平成元年の111人を除けばほぼ40人前後で、年次による差はあまりない。しかし、その40%前後は合併症をもつ患者であり、管理2の患者にほぼ匹敵する数となっている。
 われわれは、調査研究のかたちで、県内の粉じん作業場をもつ事業場の粉じん作業別に、環境の実態を把握するとともに、じん肺健診とその管理区分の状況、管理区分決定者の動向の実態まで、各段階の問題点を明らかにしようとした。
2 調査研究の方法
 宮城県内に所在する労働基準監督署、労働基準協会、作業環境測定機関、健康診断機関等の協力を得て、県内において粉じん作業を行っていると思われる334事業場をリストアップし、これらの事業場に対して「粉じん職場の実態調査票」を送り、郵送によるアンケート調査を行った。アンケート調査票は当センターの別の調査研究「宮城県における労働衛生保護具に関する実態調査」と合わせて送られた部分もある。調査項目は、事業場の属性、粉じん作業の状況、粉じん作業の管理体制、呼吸用保護具の使用状況、粉じん作業者の健康管理、粉じん作業場の作業環境管理、粉じん作業者に対する衛生教育等からなり、さらに粉じん作業環境の測定を希望するか否かもきいた。115事業場から有効回答が寄せられ、有効回答率は34.4%であった。
 上記のアンケート調査票の中で、粉じん作業場の作業環境測定を希望した24事業場のうち、本調査研究の内容に理解と協力を申し出た10事業場において、各事業場の1作業場所を作業環境測定法により、A測定、B測定及び評価を行うとともに、換気設備及び防じんマスクの装着状況の調査も行った。
3 調査研究成績及び考案
(1)アンケート調査成績について
 回答のあった事業場のうち、最も多かったのは「金属製品製造業」で22%を占め、次いで「その他の土石製品製造業」が11%、他は10%以下であった。総労働者規模では11〜20人が20%と最も多く、典型的な小規模事業の形態を示したが、101〜200人規模も11%にみられ、事業場規模からは二極文化の様相がみられた。これらの事業場での粉じん作業従事者は総数で1,477人、1事業場当り13.5人で、95%が男性であった。
 粉じん障害防止規則の別表に該当する作業を行っているのは63%で、従事者数の最も多いのは「金属を溶断し、アーク溶接し、又はアークを用いてガウジングする作業」で、延従業者の30%を占めていた。次いで「研磨材による研磨又は裁断」が28%であった。一覧表に該当しない粉じん作業も34%の事業場にみられた。この中には先端技術作業と思われるものもあり、多様化が考えられる。「じん肺法」や「粉じん障害防止規則」について「よく知っている」のは両者とも50%に満たず、「あることは知っている」も40%程度、「第5次粉じん障害防止総合対策」は16%と低く、法規面からの周知徹底が必要と思われた。
 粉じん作業管理体制については、「発生源対策」を実施しているのは58%で、「局所排気装置」が最も多く61%であった。「プッシュプル型装置」のあるのは7%のみで、普及は未だしの感がある。「粉じんマスク」の備付けは85%であり、「ない」とした4%を大きく上廻り、防じん対策の中心は防じんマスクに依存していることが知られた。
 粉じん作業環境測定を「定期的に行っている」のは46%、「したことがある」10%を合わせて6割が実施している。測定実施者の85%は外部測定機関であり、自社は6%であった。評価結果で第1管理区分は95%、第2管理区分は4%、第3管理区分は1%であった。  粉じん作業環境の設備改善が「必要がない」としたのは44%で、「一部は必要」は42%にみられた。「改善が必要だが実施していない」理由では「資金面」と「技術面」の両者が挙げられた。  呼吸用保護具の着用を作業者に「義務づけている」のは90%に及んでおり、そのうちで最も多いのは「アーク溶断・溶接」作業で、次いで「研磨材による研磨又は裁断」であった。保護具の選定者は現場の管理者、衛生管理者、事業主の順であった。  粉じん作業者の特殊健康診断は「定期的に実施」が85%、「実施したことがある」4%を含め、90%は受診させていた。じん肺健診の結果は「管理1」が95.3%、「管理2」4.5%、「管理3(イ)、(ロ)及び管理4」は、受診者1,271名の中にはいなかった。「粉じんばくろの低減措置」を受けている者は2.8%、「作業転換の努力義務」は0.5%が受けていた。合併症り患者も2名みられた。

(2)粉じん作業環境調査結果について
作業環境測定を行った作業場所は「金属の溶接・研磨」2社、「ショットブラスト研磨」2社、「研磨材による切断・研削」2社、「セメントの混練作業」2社、「鋳造の型造り、流し込み、乾燥」1社であった。これらのうち、溶接ヒュームを発生する2社では、A測定は管理区分1であったが、B測定ではそれぞれ管理区分2及び3となり、総合評価でも管理区分2及び3となった。全体換気のみで局排がないことがB測定評価を悪化させていた。「ショットブラスト装置」は囲い式局排の中にあったが、1社では装置入口のゴムパッキングの破損があり、粉じんの漏出がみられ、A測定は管理区分2とされた。セメントの混練作業を行う3社ではいずれも作業環境測定では問題はみられなかったが、粉じんの性質から簡易マスク使用は不適切と考えられた。鋳造作業室の作業環境はA測定、B測定ともに第3管理区分とされ、総合評価でも管理区分3となった。石膏撹拌装置には外付式局排はあったが、B測定対策者がいた混砂機には局排はなく、作業者も簡易マスクを着用していたのは不適切であり、早急な改善が必要とされた。
 これらの作業環境測定、換気設備、呼吸保護具の調査から、粉じん作業を行う小規模企業の作業種別の実態がかなり明らかになった。
4 おわりに
 アンケート調査と作業環境測定を主とする実地調査の両者を平行的に行うことによって、中小零細企業を中心とする当地方の粉じん作業の実態を知ることができた。この結果をもとに今後のじん肺予防対策指導の方向を探すことが求められる。