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平成10年度 調査研究結果報告


宮城県における労働衛生保護具に関する実態調査結果

主任研究者
共同研究者
宮城産業保健推進センター所長
宮城産業保健推進センター相談員
   同
   同
安田 恒人
山口 郁夫
佐藤 吉洋
阿部 裕一

1 はじめに
 事業場における作業環境改善は着実に進んでいますが、一方で工学的な対策が難しいなど、保護具に頼らざるを得ない作業場所があることも事実です。保護具の使用に関しては、適切な選択・着用・管理が大前提であることは言うまでもありません。そこで宮城県下の事業場における労働衛生保護具の使用状況等の実態を把握することを目的に、調査研究を実施しましたのでご報告します。
2 調査方法
労働衛生保護具のうち、防じんマスク・有機ガス用防毒マスク・防音保護具を調査の対象とし、粉じん作業、有機溶剤業務、騒音職場を有すると思われる県内485事業場に対し、調査票によるアンケート調査を行いました。使用している保護具のメーカー・型式・購入先も調査項目に含めました。
3 結果と考察
1)業種別の状況

 業種別に保護具の使用状況を見ると、「窯業・土石製品製造業」・「建設業」での防じんマスク、「化学工業」での防毒マスク、「鉄鋼・非鉄金属製造業」での防じんマスク・防音保護具の使用割合が、それぞれ他の業種に比べ高い傾向が見られました。それぞれの作業形態を表していると思われます。

2)粉じん作業場における状況

 粉じん作業の有無については、「ある」としたのは98事業場・54.1%でしたが、防じんマスク等の保護具を作業者に着用させているかの問いに、「はい」と回答したのが126事業場・69.6%ありました。関係法令で「粉じん作業」とは規定されていない作業においても、作業者に保護具を積極的に使用させているという状況が見られました(図1)。

図1

使用されている保護具は、交換式あるいは使い捨て式のろ過式防じんマスクであり、「金属の溶断、アーク溶接、又はガウジングする作業」、「研磨材の吹き付け、研磨材を用いて動力による研磨等の作業」での使用が多いという結果でした。

3)有機溶剤作業場における状況
 有機溶剤を取扱う作業の有無については、「ある」としたのは71事業場・74.0%で、防毒マスク等の呼吸用保護具を作業者に着用させているかの問いに、「はい」と回答したのは49事業場・51.0%でした。使用されている保護具は、すべて直結式・小型の防毒マスクでした。作業としては「塗装業務」の25件がもっとも多く、次いで「洗浄・払拭業務」の23件、「乾燥の業務」9件となっています。

4)騒音職場における状況  騒音職場の有無については、「ある」としたのは50事業場あり、全体の52.1%でした。防音保護具を作業者に着用させているかの問いには、「はい」と回答したのは37事業場・38.5%にとどまっています。防じん・防毒マスク等の呼吸用保護具に比べ、防音保護具を使用している事業場は少ない状況です。防音保護具では、耳栓が使用されており耳覆い(イヤーマフ)の使用は見られませんでした。作業場としては、「ショットブラストによる金属研磨業務を行う作業場」の14件がもっとも多く、次いで「インパクトレンチ等を用いるボルト・ナットの締め付け等の作業を行う作業場」9件、「動力プレスによる業務を行う作業場」の7件の順でした。  各保護具とも、使用しているの種類数を見ると、1種類ないし2種類で、多種類を採用している事業場はごくわずかです。購入先に関しては、安全衛生保護具の専門業者以外からの購入も多く、誤った機種選択を避けるためにも販売業者が保護具に関する知識を十分持っているか、事業場は確認する必要があると思われます。

5)労働衛生保護具の選定者
 複数回答の結果、「現場の管理者」がもっとも多く73件・34.3%、次いで「衛生管理者」58件・27.2%、「事業主」42件・19.7%、「作業主任者」19件・8.9%の順でした(図2)。
図2
また、半数以上の事業場で、複数人で協議・検討して選定を行っていることが分かりました。

6)労働衛生保護具選定の際の参考事項
「現場管理者の意見」の81件がもっとも多く13.7%、次いで「労働安全衛生法・関係法令」78件・13.2%、「作業者の要望」77件・13.0%、「カタログ記載内容」60件・10.1%、「衛生管理者の意見」56件・9.5%の順でした(図3)。外部からの客観的情報としては、やはりカタログからといえます。各メーカーには、カタログの記載が分かりやすい内容となるよう企業努力をお願いしたいところです。

図3
7)保護具に関する労働衛生教育
 作業者に対する保護具に関する労働衛生教育の実施状況等について、「必要に応じ行っている」が123事業場・68.0%、「定期的に行っている」が16事業場・8.8%、「ほとんど行っていない」は25事業場・23.8%という状況でした。教育の際の講師では、無記入の41件を除き、「現場の管理者」がもっとも多く67件・30.5%、次いで「安全管理者」の53件・20.3%、「衛生管理者」50件・22.7%の順でした。「産業医」・「労働衛生コンサルタント」の活用はきわめて低い状態です(図4)。
図4
4 終わりに
 本来労働者の健康を守るべき保護具も、誤った選択・安易な使用によっては労働者をかえって危険にさらすことにもなりかねません。導入の際には、各作業場の状況を把握することはもちろんのこと、十分な知識を有する者が選定作業を行うこと必要があります。また、メーカーと事業場をつなぐ販売業者の果たす役割も大きいと考えます。