平成11年度 調査研究結果報告


宮城県における鉛取扱作業の実態調査

主任研究者
共同研究者
宮城産業保健総合支援センター所長
宮城産業保健総合支援センター相談員
   同
   同
   同
安田 恒人
加美山茂利
小松 昭文
佐藤 吉洋
阿部 裕一

1 はじめに
 鉛は産業界で最も広く用いられてきた有害金属であるが、作業方法の改善や代替物の使用によって、その使用は漸減しつつある。鉛作業者の特殊健康診断実施状況を見ても、実施事業場数及び労働者数ともに漸減し、有所見率も減少している。しかし、宮城県における鉛健診の有所見率は減少して居らず、全国に比しても高率である。このことから県内事業場における鉛使用とその取扱の実態を明らかにすることによって、事業場の作業環境管理、健康管理等の態勢を適切にする必要があると考え、本調査研究を実施した。
2  調査研究方法
 宮城県内に所在する労働基準監督署、労働基準協会、作業環境測定機関、健康診断機関等の協力を得て、県内で鉛を取り扱っていると思われる事業場269社をリストアップし、これら事業場にアンケートを郵送し、平成11年12月1日現在での状況を記入、平成12年1月25日までの返送を依頼した。
 発送数269通に対し、「鉛取扱いあり」と回答があったもの83通、「鉛取扱いなし」とし調査票を返送してきたもの17通、「回答拒否」4通、「回答の得られなかったもの」165通で、回答率は38.7%であった。なお「回答の得られなかったもの」165通について電話等で問い合わせたところ、「鉛の取扱いなし」113通、「倒産・閉鎖・転居先不明」12通、その他40通であった。
 アンケートの有効回答は82通で30.5%であった。この82通について集計を行った。  上記アンケートの中で鉛作業環境測定を希望した事業場のうち、本調査研究の内容に対して理解を示し、協力を申し出た9事業場の各1作業場所において鉛則及び作業環境測定基準による場の測定を行うとともに、換気設備及び呼吸用保護具の使用状況の調査を行った。
3 調査研究成績及び考察
1)アンケートの調査成績について
 回答のあった事業場のうち、最も多かったのは「電気機械器具・金属製品製造業」で76%を占め、次いで「その他の製造業」が10%であった。総労働者数では100〜299人が27%、50〜99人が15%、30〜49人が12.2%と、30〜299人で54%を占め、県内事業場としては中規模の企業に鉛取扱い作業の多いことが知られた。10〜19人の零細規模、300〜499人及び1,000人以上の大規模でもそれぞれ7%であった。
 これらの事業場での鉛取扱い作業者の合計は2,006名で、1事業場当り24.5人であった。男性は49%に対し、女性は51%で、女性にやや多かった。鉛作業の内容としては「はんだ付け」が73%と最も多く、それ以外の作業はいずれも数%以下であった。事業場で取り扱っている鉛化合物としては鉛合金が最も多く、次いで鉛、他は極く僅かな割合であった。  鉛中毒予防規則を「よく知っている」事業場は59%に及び「あることは知っていた」の34%を加えると93%にのぼり、周知度は高かった。
 鉛作業の管理体制については「局所換気装置がある」としたのは82%で、次いで「鉛作業休止時の手洗いや口すすぎ」が67%、「全体換気装置」は65%にみられた。これに対し、「作業工程・方法の改善」や「鉛使用の中止、有害性の少ないものへの変換」を実施しているのは43%及び27%とやや少なかった。
  鉛作業場の環境測定を「定期的に行っている」と「測定をしたことがある」を合わせると48%で、「測定したことがない」の49%とほぼ同率となっている。測定結果の評価では98%が第1管理区分であり、それ以外の2%は第3管理区分であった。
  鉛取扱作業に当り防じんマスク等の呼吸用保護具を使用させているのは32%にすぎず、57%は使用を義務づけていなかった。
 鉛作業従事者に特殊健康診断を「定期的に受けさせている」と「受けさせたことがある」を加えると96%の事業場に達し、ほぼ全部の事業場で鉛健診を受けさせている。最近に実施した鉛健康診断受診者1,602名中、有所見率は1.1%で、全国平均の1.8%よりもやや低い。これら有所見者に対する事後措置としては、産業医や医療機関等での「受診をすすめた」が29%で、「作業環境や作業方法の改善」を行ったのは7%に止まった。
 鉛作業者に対する労働衛生教育を「定期的に実施」及び「実施したことがある」は66%であり、その講師は「自社の産業医または衛生管理担当者」が65%であった。

2)鉛作業環境の測定について
 今回のアンケート調査に応じた鉛取扱事業場の73%ははんだ付け作業を行っている事業場であり、また、これらの事業場での鉛作業者の特殊健康診断結果も大部分は無所見であった。しかし、有所見者もみられることから、とくに小規模事業場での鉛作業環境に対する不安感の大きいことが、自由意見記入欄にも見られ、作業環境測定に対する希望は12事業場、14.6%にみられた。このうち、調査に対し理解と協力を申し出た9事業場の各1作業場所において、A測定及びB測定による場の環境測定を行い、その結果に基づいて評価を行った。そのうち8事業場でははんだ付け作業が行われており、1事業場では含鉛塗料による塗装が行われていた。1作業場所当りの鉛作業従事者は平均9.1人であった。これら作業場所でも測定結果はA測定、B測定ともにいずれも管理区分1で、総合評価も第1管理区分となった。また、これとともに、これら作業場所における換気設備、呼吸用保護具の使用と管理の状況も調査した。この結果、県内小規模事業場における鉛取扱作業場所の実態を明らかにすることができた。
4 おわりに
 アンケート調査と、作業環境測定を主とする実地調査を平行的に行うことによって、当地方の鉛取扱作業の実態を知ることができた。とくに、鉛取扱い事業場と考えられていた事業場の半数近くが鉛取扱いを廃止又は代替物の使用に変わっていたことは今回の調査によりはじめてわかった。この結果をもとに、今後の県内事業場における鉛取扱作業についての対策を樹立し、効果的な指導と助言を行うことが、本推進センターの事業の一つとなる。