平成13年度 調査研究結果報告


宮城県における電離放射線取扱業務の実態調査

主任研究者
共同研究者
宮城産業保健総合支援センター所長
宮城産業保健総合支援センター相談員
   同
   同
   同
   同
安田  恒人
加美山茂利
丹野  憲二
山口  郁夫
佐藤  吉洋
阿部  裕一

1 はじめに
 宮城産業保健総合支援センターでは平成9年以来、県内における有害作業の実態について、アンケートによる調査と作業環境測定による調査を組合わせることによって調査を行なってきた。これまでに、騒音、有機溶剤、鉛及び特化物の取扱い職場の実態を調査し、問題点を指摘し、改善の助言を行ってきた。平成13年度の調査研究として電離放射線取扱業務を取り上げ、県内事業場、とくに一般医療機関、歯科医療機関を含む広汎な調査を行なったので報告する。
2 電離放射線取扱作業の統計情報
 宮城労働局の統計資料では、平成元年以降平成13年までの本県における電離放射線による業務上疾病発生数は0であるが、電離則健康診断での有所見率は常に全国より高いレベルにある。電離放射線取扱い事業場数は平成元年の265か所から最も多い平成10年の315か所まで多少増減はあるものの、あまり大きな変動はない。しかし、電離放射線作業従事者数を電離則による特殊健康診断(以下、電離則特健という)受診労働者数からみると、平成元年の2,840人から平成10年の3,961人まで定常的な増加傾向を示したが、その後漸減し、平成13年には2,697人となった。電離則特健有所見率は平成元年には1.2%と低率であったが、平成7年には5.1%、平成12年には6.4%となった。これらは何れも全国平均の有所見率よりも高く、平成13年には4.6%となったものの全国の3.6%より高い(図1)

図1 宮城県における電離則特健受診者数と有所見率の推移
3 調査研究の対象と方法
県内の電離放射線取扱職場の衛生管理の実態を知るために、宮城県医師会、宮城県歯科医師会、労働基準監督署、労働基準協会及びその支部、作業環境測定機関、健康診断機関等の協力を得て、電離放射線発生装置を設置し、取扱っていると思われる医療機関及び事業所場をリストアップした。医療機関については施設数が多いので調査に協力をえられる施設の選択を医師会及び歯科医師会に依頼した。以上の方法で選択された事業場816か所に「電離放射線取扱職場の実態調査票」を送り、郵送によるアンケート調査を行なった。回答の返送数は424通、回答率は52.0%であった。回答事業場の内訳は一般医療機関215施設、歯科医療機関165施設、一般事業場35施設であり、名称を明らかにしない施設からの回答も9通あった。
 このアンケート調査の中で電離放射線取扱い職場の作業環境測定を希望した一般医療機関5施設の8作業箇所、歯科医療機関の5施設6作業箇所並びに工業的事業場5施設の15作業箇所について、医療法と電離放射線障害防止規則による作業環境測定を行った。それぞれの測定箇所における稼動時の1センチメートル線量当量率の時定数を3秒とし、これから1時間当り線量当量率(mSv/h)を算出、照射時間、照射回数、1日の最大延べ労働時間を考慮して、3月間における実効線量(mSv)を算出した。
4 調査結果と考察
1)アンケートによる調査成績について

1. 回答のあった424事業場で最も多く使用されていた電離放射線業務の内容は「医療用でのエックス線装置を使用」が385事業場90.8%に及びその大部分を占めていた。工業用でエックス線使用は12事業場2.8%、放射性物質の取扱いや原子炉の運転等は極く少数であった。医療機関での電離放射線取扱者は511名みられたが、医師・歯科医師がそれぞれ3分の1を占め、診療放射線技師は12%であった。

2. 電離放射線障害防止規則を知っていたのは73%、今回の改正を知っていたのは50%に及んでいた。医療機関で医療法によって知事等にX線装置の設置届を出していたのは80%であったが、電離則によって労働基準監督署に届け出していたのは20%にすぎなかった。

3. 電離放射線管理体制の上で比較的高率であったのは「放射線管理区域の明示」、「放射線に関する注意事項の掲示」、「放射線装置室の標識の掲示」、「放射線防護の遮へい物の設置」「X線装置又は放射性物質装備装置使用中の立入禁止」等であった。管理区域や施設内の放射線測定や放射線業務従事者の被ばく実効線量の測定、線量測定結果の掲示等の電離放射線管理態勢は比較的不備であった。電離則による特殊健康診断受診率も比較的悪く、「受診させたことはない」との回答が59%に及んだ。

4. 電離則による特殊健診を受診した138施設の男性1,449人、女性507人、計1,956人からの有所見者は男性14人(0.97%)、女性18人(3.55%)合計32人(1.64%)で圧倒的に女性が高かった。また、施設で特に有所見者の多かったのは日常的に電離放射線業務を行なっている健康診断機関にみられたことは注目に値する。

5. 有所見者への事後措置では「医療機関での受診をすすめた」53%、「健康診断機関での受診をすすめた」27%が多かったが、「作業環境を改善」や「作業方法の改善」はみられなかった。

2)電離放射線取扱職場の作業環境測定結果について

 作業環境測定を行なった一般医療機関の5施設6作業箇所、歯科医院5施設6作業箇所、工業的使用事業場5施設15作業箇所について、それぞれのカテゴリー毎に平均値を算出し比較してみると、表1に示すように、全測定値による3月間の実効線量(mSv)の平均値及び最大値はいずれも工業的にX線装置を使用する事業場群が最大であり、次いで一般医療機関、歯科医院の順であった。工業的使用事業場での最大値は屋外に設置された当該装置の外部扉を開け、点検時の作業位置から外れた位置で得られた。一般医療機関で最大値とされたのは、胃透視時に患者を介助する看護師の位置において得られた。これらの非正常時での被ばくを少なくすることを助言した。

表1 全測定値による3月間の実効線量(mSv)の結果
5 まとめ
アンケート調査と作業環境測定及び作業管理の実地調査を行なうことによって、当地方の電離放射線取扱作業の実態を知ることができた。これらの調査で問題とされた点を改善すべく、本調査結果を電離放射線管理や衛生教育に生かすことが当推進センターに求められている。