平成8年度 調査研究結果報告


騒音職場における遮音許容度に関する研究

主任研究者
共同研究者
宮城産業保健総合支援センター所長
宮城産業保健総合支援センター相談員
    同
    同
安田 恒人
加美山茂利
佐藤 洋
佐藤 吉洋

1 はじめに
 平成元年の労働安全衛生法の改正により一般健康診断に選別聴力検査が導入され、また、平成4年に「騒音障害防止のためのガイドライン」が策定され、騒音作業従事者の健康障害防止の推進が計られている。
 一方、騒音職場では依然として聴覚保護具の使用が徹底せず、聴力障害をきたしている例が少なくない。従来の耳栓やイヤーマフは遮音効果を大きくすることの努力が払われ、現場での使用に充分な配慮がとられているとは言い難い点がある。騒音職場における作業進行に必要な音量を確保しつつ聴覚保護を図ることを目的として、事業場における騒音作業の実態、聴力障害の実態、保護具の装着状態と遮音性の解明の調査研究を行った。
2 調査内容
(1)騒音作業場における騒音管理実態調査
 (社)日本作業環境測定協会東北支部宮城分会(日測協宮城分会)及び県内健康診断機関の協力を得て、騒音職場があると思われる283社を選び、「職場の騒音管理に関する実態調査票」を送り、郵送によるアンケート調査を行った。アンケートによる実態調査の項目は以下の事項に関するものであった。
 【1】事業場の属性、【2】騒音職場の状況、【3】騒音管理の状況、【4】聴覚保護具の使用状況、【5】騒音職場の作業環境測定及び設備の改善指導、並びに騒音作業労働者に対する聴力検査、衛生教育の希望の有無。
 アンケート調査は平成8年9月1日現在での実態を記載し、11月15日締切りとして回収した。118事業場から回答があり、回答率は41.7%であった。

(2)騒音職場の作業環境測定及び聴力検査
 騒音職場の作業環境測定は1事業場の4作業カ所で予備的な測定を行ったあと、アンケートで環境測定を希望した事業場のうち、過去に作業環境測定を実施したことがなく、また聴力検査を行ったことのないこと、聴力保護具を配布していること、発生騒音が定常騒音であること等を選定条件として5事業場を選び、騒音に関する作業環境測定及び特殊健康診断を行った。作業環境測定は積分型普通騒音計による等価騒音レベルの測定を行い、A測定及びB測定結果について評価を行った。また、実時間分析計によってオクターブバンドレベルの騒音周波数分析を行い、その結果を日本産業衛生学会の騒音許容基準値と比較した。  一方、当該作業場所で作業している労働者80名の聴力検査を、250から8000ヘルツまでの6周波数について実施した。

(3)耳栓の使用状況調査と遮音度の調査
 上記の作業環境測定及び聴力検査を実施した作業場のうち、1カ所を除き耳栓を配布していた。使用耳栓についてメーカーのカタログや照会等を行い、一部の耳栓については直接に遮音度の測定を行って、保護具着用時の作業環境への適用妥当性を求めた。
3 結果と考察
(1)騒音管理の実態
 アンケートの回答を寄せた118事業場の業種で最も多いのは電気機械器具・金属製品製造で39.8%、次いで、その他の製造業が21.1%、他は何れも10件以下であった。労働者規模では100〜199人が24.6%、200〜499人が22.8%、50〜99人が19.5%であった。騒音作業従事者数では1名から445名の間に分布しているが、10〜29名が33.3%で最も多く、次いで1〜9名が28.9%を占めていた。
 「騒音障害防止ガイドライン」の存在は91%が知っていた。騒音レベルの調査をしていたことのある83社の629作業カ所についての評価結果は第1管理区分は46%、第2管理区分30%、第3管理区分24%であった。騒音に関する特殊健康診断を受けさせたことのある事業場は38%あり、防音保護具を配布していたのは58%であった。

(2)騒音作業環境の実態  
 アンケート調査に回答した事業場のうち、騒音職場の作業環境測定を希望した24事業場について、調査内容の項で述べた基準のよって5事業場を選び作業環境測定を実施した。測定作業場所は印刷作業場1カ所、金属研磨作業場1カ所、たばこ用フィルター製造加工作業場2カ所、金属溶接・切断作業場1カ所、石材研磨加工作業場3カ所の計8単位作業場所であり、種類、規模、設備、作業方法も多岐に亘っていた。これら作業場のA測定結果は第1管理区分3カ所、第2管理区分3カ所、第3管理区分2カ所であったが、B測定ではいずれも第3管理区分であったため、総合評価としてはすべての作業場所が第3管理区分とされた。これらの作業場所での従業者に対しては1事業所を除いて耳栓の配分がなされていたが、使用状況は低率であった。

(3)騒音作業従事者の聴力の実態
 作業環境測定を行った職場の騒音作業従事者80名の聴力検査をフルオージグラムにより実施した。有所見者は21名で、左右併せて160耳のうち、要管理2は0.6%、要管理1も0.6%、要観察2 3.8%、要観察1 15%であった。これらの事業場のうち1カ所を除いて耳栓を配布していたが、耳栓の配布と聴力障害者の発生は必ずしも一致して居らず、耳栓の使用状況、遮音性能等について、更に検討の必要性があることが知られた。

(4)耳栓の使用状況と遮音性の調査
 周波数分析によって騒音作業環境測定を行った作業場で働いている人々について、配布されている耳栓のメーカーと型式を調査した。騒音の周波数分析結果と日本産業衛生学会の8時間暴露許容基準値を比較し、さらに、使用耳栓の遮音値データを基に、遮音後の周波数毎の聴器暴露量を算出し、許容基準値との差をみた。図に示すように、遮音後暴露量は許容量を大幅に下廻るものが多く、とくに、会話音量領域での低下が目立った。なお、耳栓の遮音値データの不明なものについては、実験によって直接に求めた。
4 おわりに
 宮城県内の騒音職場における健康管理の実態をアンケートによって明らかにするとともに、測定調査を申し出た数事業場について、作業環境測定、聴力測定、耳栓使用状況等の調査を行った。使用耳栓の作業環境への適合性を検討する方法を案出し、事業場へのアドバイスを行った。この方法を更に拡大し、聴力保護具の選択を具体的に行う方法を考案中である。