平成8年度 調査研究結果報告


宮城県における零細企業の健康管理とその活性化対策について

主任研究者
共同研究者
宮城産業保健総合支援センター所長
宮城産業保健総合支援センター相談員
    同
    同
安田 恒人
若狭 一夫
伊東 市男
小松 昭文

1 はじめに
 中小企業労働者の高齢化、リストラによる下請け企業の零細化は健康管理の上でも大きな問題を投げかけている。宮城県においてもこのような状況は深刻になっているが、従業員50人未満の零細企業の健康管理の実態についてはよく知られていない。  平成7年3月に当推進センターでは、宮城県における従業員50人以上の事業場の産業医及び事業場を対象に「産業保健実態調査」を実施し、健康管理の実態を明らかにしたが、今回は50人未満の事業場をとりあげ調査研究を行った。
2 調査内容
 宮城県内の労働者規模50人未満10人以上の事業場1600事業場を選定し、当センターで作成した「産業保健調査票(労働者規模50人未満)」によるアンケート調査を実施した。調査は郵送法による通信調査とし、平成8年12月下旬に各事業場に送付し、12月1日現在での状況を記入、平成9年1月20日を締切り日として料金別納郵便で回答を返送して貰った。
 アンケート発送数1600に対し、596事業場から回答が寄せられ、回答率は37.25%であった。
 アンケート調査項目は(1)事業場の属性、(2)事業場の衛生管理体制、(3)事業場の健康診断、(4)従業員の疾病状況、(5)事業場における産業保健活動の課題及び問題点、(6)産業保健活動の支援サービスに対するニーズの各項目からなり、最後に自由回答欄を設けた。
3 結果と考察
(1)事業場の属性
 回答のあった596事業場の業種は、建設業が最も多く、次いで卸売・小売業、運輸業と続いた。労働者規模は10〜19人が33%、20〜29人が26%であり、この両群で6割を占めた。有害事業場のあるものは30%で、粉塵職場が最も多く、これに有機溶剤・特化物等の有害化学物質取扱職場、深夜業がつづいた。

(2)衛生管理体制
 労働安全衛生法の周知度は79%で、労働者規模の小さいほど「知らない」との回答が多かった。自己の事業場でとるべき労働衛生管理体制について「知らない」との回答は28%にみられ、金融・保険業に多かった。26%に嘱託産業医や相談医がいる一方、衛生推進者のいるのは55%にすぎなかった。衛生管理担当者の実施事項で最も多いのは「健康診断に関すること」で、次いで「保護具の点検・整備」、「職場巡視」であった。約4分の1の事業場では健康管理に対する確実な業務が行われていないものと思われた。

(3)職場の健康診断
 一般定期健康診断の実施率は99%で、平成7年に行われた従業員50人以上の事業場での調査と同率であった。健診実施機関は「健診機関」が73%と最も多く、「近くの病院・診療所」及び「産業医又は相談医」が夫々10%であった。成人病検診を行っている事業場も77%あり、これも50人以上事業場と同率であった。有害業務のある事業場で、義務づけられた特殊健診を行っているのは56%で、通達による特殊健診を行っているのは8.4%であった。健康診断の結果通知について、【1】個人毎に通知しているのは98%であった。【2】第2次健診を事業場負担で行っているのは33%、個人負担で行っているのは59%であった。【3】健診後の事後措置を行っているのは32%、相談があれば行うとしているのは42%であった。

(4)従業員の疾病状況
 【1】3ヶ月以上の長欠者が1人いる事業場は9%、2人は1%、それ以上は0.2%であった。【2】治療しながらの通常勤務者が1人いる事業場は13%、2人が7%、3人が6%、4人が2%、5人以上が4%にみられた。【3】現在治療中で軽い勤務についている人が、1人いる事業場は3%あり、2人及び3人は夫々0.5及び0.3%であった。【4】過去1年間に在職中に死亡した従業員が1人いる事業場は2%、2人が0.2%あり、死因の第1位は「がん」で47%を占め、第2位は「事故」の13%であった。これら疾病状況調査については各項目ともに20%程度の無回答があった。

(5)産業保健活動の課題及び問題点
 現在、事業場でかかえている労働衛生上の課題及び問題点として挙げられたのは、「快適職場づくり」39%、「成人病の予防対策」32%、「健康保持・増進対策」15%が上位を占めていた。これらは平成7年に行われた50人以上の事業場での調査と類似している。また、事業場で労働衛生対策実施上問題となることは、「仕事が忙しく手がまわらない」19%、「具体的な問題がよくわからない」17%などが比較的多く、小規模事業場の問題点が浮きぼりにされた。

(6)産業保健活動支援サービスのニーズ
 宮城産業保健総合支援センターの認知度は49%で、地域産業保健センターのそれも45%と夫々ほぼ半数に達していた。しかし、管轄地の地域産業保健センターの名称や所在地を知っていたのは16%にすぎず、一層の普及をはかる必要がある。実際に自由記入でえられた回答者の意見で最も多かったのは、産業保健推進センターや地域産業保健センターのPR不足であった。地域産業保健センターの支援サービスとして利用したいものの第1位は「健診後の事後措置」37%、次いで「健康相談」30%、「小規模事業場の健診の実施」29%、「労働衛生教育」28%で、「事業場の個別指導」は21%に止まった。利用の必要がない理由として挙げられたのは「利用する時間がない」43%、次いで「その他」が41%で、サービスの内容がよく理解されていないことによるものと思われる。「遠いから」、「作業時間が大切」の理由も夫々8%づつでみられた。
4 おわりに
 平成7年に実施した宮城県内の従業員50人以上の事業場における「産業保健実態調査」と対応すべく、従業員50人未満10人以上の事業場の健康管理の実態を調査した。その結果、健康管理体制や健康診断の実施状況については、50人以上の事業場の健康管理や健康診断の延長上にあると考えられ、法的な規制がかなり良く守られているものと思われた。しかし、産業保健活動に関する考え方や支援サービスのニーズには大・中規模の事業場のそれと異なった点のあることが明らかにされた。地域産業保健センターや産業保健推進センターがそれらのニーズをくみあげて、適切なサービスを提供することが、小・零細規模事業場の産業保健活動を活性化するために必要であることが知られた。