平成9年度 調査研究結果報告


職場のメンタルヘルスと生活習慣の関連について

主任研究者
共同研究者
宮城産業保健総合支援センター所長
宮城産業保健総合支援センター相談員
   同
   同
   同
安田 恒人
伊東 市男
加美山茂利
三塚 浩三
佐藤 祥子

1 はじめに
 近年の産業構造の変化、技術革新の進展は著しく、産業の現場においてもさまざまなストレスによる心の障害がおこりつつある。また、職場以外の生活の変化も著しく、食、飲、動、眠等の生活習慣の変化によって心の変調を来たしやすくなっている。この現実に際し、職場のメンタルヘルスと職場環境要因並びに生活習慣の関連を探ることによって労働者の心の不健康のおこる要因との関連性を把握し、それらを指導改善することにより心の不健康を防止する目的をもって、県内にある某事業所及びその系列の規模の異なる3事業所についてアンケートによる調査を行い、この問題についての解明を行った。
2 対象者と調査方法
 宮城県内北部にある某製造工場の本社及びその関連事業所3社の全従業員1,558名を対象に、アンケート用紙を配布し、1,352名から回答を得た。うち性別未詳11名、有効回答者は1,341名(男1,079名、女262名)であり、回答率は86.1%であった。
 調査内容は性別、年齢、及び家族構成により回答者の性状を知るとともに、事業所での活動状況、対人関係、家庭での生活習慣、家族関係について尋ねた。そのうえで、心の健康について、(1)ストレス状態については関谷氏による自己チェック法、(2)うつ傾向についてはZungのS.D.S.簡略法である「うつ状態自己評価法」、また(3)飲酒習慣についてはジョンスホプキンス大学病院による「アルコール依存症自己診断法」を用い、それぞれの基準による評価点数をもって有所見者とした。そして、メンタルヘルスに及ぼす各要因の関連を検討した。
 上記のアンケート調査票の中で、粉じん作業場の作業環境測定を希望した24事業場のうち、本調査研究の内容に理解と協力を申し出た10事業場において、各事業場の1作業場所を作業環境測定法により、A測定、B測定及び評価を行うとともに、換気設備及び防じんマスクの装着状況の調査も行った。
3 結果と考察
1)心の健康自己評価有所見者の出現率
 対象者総数及び事業所ごとのストレス状態、うつ傾向及びアルコール依存症有所見者出現状況は表1に示した。ストレス状態に比し、うつ傾向は男女ともに有所見者の出現率は高く、事業所規模が小さくなるほど高率を示すようになり、特に女性でそのような傾向がみられた。アルコール依存症有所見者は女性では極めて少ないが男性では事業所による変動が大きい。

2)心の健康状態の自己評価点数の相関
 「現在のストレス状況」、「うつ傾向」及び「アルコール依存度」の自己評価点数の相関関係については表 2に示すように、「ストレス」と「うつ傾向」の相関は大きく、対象数の多い事業所では男女ともに危険率0.1%以下で有意であるが、それの少ない事業所の女性では有意でなかった。「ストレス」と「飲酒習慣」、「うつ」と「飲酒習慣」は女性の飲酒率が低いことから各事業所とも男性にのみ有意の相関がみられた。

3)心の健康有所見者と職場及び生活要因
 職場での活動状況、対人関係ならびに家庭での生活習慣、家族関係についてのアンケート調査各項目該当者中の「ストレス」、「うつ傾向」、「アルコール依存」の各有所見者出現率をみた。対象者総数についての平均出現率よりも高率を示した主な項目を図に示した。転勤・出向は男女ともにストレスに、単身赴任は男性のうつ傾向、飲酒とやや関連がみられた。職場の人間関係の不良はさらに男女ともに関連がみられ、男性ではストレスと、女性ではうつとの関連が大きかった。また性格では「消極的」、「自己中心」、「神経質」が男女ともにストレス、うつとの関連がみられた。「面白くない時」や「忙しい時」に酒を飲む人にもストレスやうつ傾向が多かった。「眠れない」、「悩みを話せる人がいない」、「現在の人間関係に不満」の人も男女でストレス、うつが多くみられた。とくに「夫婦の会話がない」、「子供との会話がない」男性はストレス、うつが多くまた、問題飲酒も多かった。「家のローン」や「現在の生活に不満」で男女ともにストレス、うつ傾向が多かった。これら総数でみられた関連は事業所の規模、性質によって多様に修飾されていた。
4 おわりに
 今回の調査研究によって職場のメンタルヘルスのうえで注意すべき生活習慣の要因について詳細に知ることができ、これを指導改善し、心の不健康の予防に役立てる目途が立ったことは大きな成果であった。